教職員の労働実態と教育行政学の研究課題

今日は大阪大学を会場に、標記の公開シンポジウムを聞きました。これは日本教育行政学会の中にシンポジウムなのですが、私のような非会員でも聞くことができました。その趣旨を以下に記します。

シンポジウムの報告者は、弁護士、臨床心理士、大学教授の方々です。そこで現場の教職員が話をする場ではなく、多くの研究の結果としてのデータを示されるのですから、より真実味があり、専門的な見解を聞くことができました。いわゆるエビデンスとしての話ですから各々の現場の教職員の主観は取り除かれています。こんな話をされると考えさせられます。

○過労死等の業務上認定基準は「発症前1か月に概ね100時間あるいは発症2か月間ないし6か月間に月あたり概ね80時間の時間外労働が認められるとき」です。この労働基準に当てはまるのは、勤務医と教員が多い。平成25年度の学校教員在職死亡数は小中高あわせて504名。

○ある府県の調査として校長退職者の退職後の平均余命は5年だった。

○部活動指導は違法ととらえられている。

○臨床心理士から、「教員の善意に頼って制度が成り立っていることもある」「教員の苦手は、『頼む』『断る』『できないと言う』『自分の気持ちを話す』こと」「教員は一般企業に勤めている方の3~4倍疲れている。その検証結果も文科省から示されている」「仕事と心中するな」。

○超過勤務の実態は「文化」として定着している面があるので、教員が身動きできない。この文化を変えていく必要がある。

○教師の仕事ではコミュニケーションが一番重要。相手からの信頼を集めていく姿が本来の姿。

○教育行政当局と連携をしていかなければならない。現場と当局には教育学や福祉の側面からの「発達」ということのとらえ方が違っている。

○フランスでは、教科指導だけでは教師は成り立たない、生徒指導領域を教師は担わなければならない、という方向で進んでいる。日本的な在り方に使づいてきている。

このシンポジウムでは、司会から報告者4人に「お題」が出され、その場でそれぞれの方からの見解が発表されるような進め方をしていました。見ていても飽きることがなく、こういう進行もいいと思いました。もっとも報告者のレベルの高さが必要なことは言うまでもありませんが。

お題1 日本の教師の労働実態が、世間になかなか浸透していかない、受け入れられにくい原因はどこにあるか?

→ 「見えないグレー・ブラックな勤務時間」「教師従属の労働論。子どものためには24時間働くのが当たり前だという社会の目」「最近の風邪。教職に対する熱は冷めてもセキは抜けない」「感情労働の見えにくさ」

お題2 学校教師の「ブラックな労働」を政策的に改善していくために、最も重要な学術研究は何だと考えるか?

→ 「在職死亡、長期療養の一斉調査」「教員の仕事を教育活動に特化させるモデル地区での実験」「実態調査とワークシェアリングの実例」「パワーポリティクスの解明」

お題3 給特法は廃止すべきと考えるか?

→ 「立法事実の変化により、違法と考える。勤務時間意識を失わせ、聖職意識を醸成させる要因」「平日の部活動指導手当の支給。4%の割合の増額が必要。部分的に改訂していき運用する」「ご当人が倒れている事例が多い。忙しくてグループ化できない」「総体としての待遇改善が前提」

お題4 教師としての仕事は本当に特殊なのか?

→ 「特殊性の有無と勤務条件は別のこと。勤務条件を検討すると特殊性がぼける。民間では固定残業代ということになるが、それは違法となっている」「特殊という意味が?、教師は専門職として専門性をもった仕事をしている」「やりがいを失いやすい。本文は教科指導、実際は雑務と人の調整に追われている」「労働力市場の中で教職をとらえる視点」

ここには記しきれないほどの豊富な内容でした。特に給特法の在り方、つまり4%の教職調整額についての内容は、本当に教員やその周辺にいる方々にはわかってほしいことであります。上記にも出てくる民間での固定残業代のことではないかとも思えます。4%を時間で表すと1日20分程度の残業時間ということになります。こんな残業時間分の上乗せだけで、教員の残業が足りているはずがない実態を理解すべきではないかと思うのです。これだけではなく、多くの視点から教職員の労働についてみることができたと思います。有意義な時間でした。

#教職員 #労働実態 #教育行政 #シンポジウム #大阪

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