クレーム対応セミナー
今日は新潟県学校事務研究協議会が主催する学校事務職員の方々の研修会に参加させていただきました。講演会のテーマが「クレーム対応セミナー~ピンチはチャンス!クレームに学校改善のヒントが?!~」、講師が大阪大学大学院の小野田正利教授でした。小野田先生はいわゆるモンスターペアレント論が有名で、学校トラブルへの対応についての第一人者です。その語り口と見た目(失礼、服装などです)は強烈な印象ですが、講演の内容は鋭く、適切で、もやもやしていた感覚的なものを明らかにしてくださるようなものでした。学校現場でのクレーム対応だけではなく、一般的な生活上でも当てはまることも少なくありませんでした。以下は印象に残っていることです。
○クレーム、苦情のトラブルから誰も逃れることは不可能な時代になった。
○人生の3割はクレーム対応ではないかと思われる。この対応でその人の人生は左右されることもある。
○学校への申し出は「要望」「苦情」「無理難題」に分けられる。「要望」は学校の指導への要求であり、耳を傾けるべきもの。「苦情」は主に地域での問題事例、校外での生徒と住民のトラブルなど。「無理難題」は理不尽な内容のもので、いわゆるいちゃもんととらえられるもの。
○日本的にいうモンスターペアレントはアメリカでは「ヘリコプターペアレント」と言っている。
○立場と価値観の違いでクレームになる。他に代替手段があるようであればゆとりをもってそちらを提案していくとおさまる場合もある。
○振り上げられた拳だけを見てクレームと判断するのではなく、なぜ拳を振り上げたのかの理由を聞き、共有していけると解決につながる。拳を振り上げた根底になる思いを聞きだすことは、相手の正面に立って100%の力で受け止めるのではなく、70%くらい、ややゆとりをもって聞いていくとその人の周辺も見えてきて楽に対応できることもある。
○「そうですか」という言葉で受ける。「そうですね」というと、相手は聞いている人も納得してもらったと受け止められ、さらに要求を高めてくることがあり、後の対応が大変になることがある。
○クレームには拒絶する対応や言葉は絶対にNG。
○電話で受けたときに大変だと思ったら「学校に来て話を聞かせてください」というと、相手の気持ちの高ぶりが抑えられることもある。
○「お互いさま」という言葉は当事者同士が使う言葉であり、その立場にない人が使うと言われた方は気分を害する。
○全国的に今から42年前に合計特殊出生率が2.0を切った。そこから日本の人口減少は始まったと言える。
○40年前は夜10時から翌朝5時まで働いている人は5%以下だった。今は20%くらいいるので、生活時間帯への配慮が大切。日が昇ると活動が始まる、ということは全ての人に当てはまることではない、という受け止めが大切。
○今は「音」をめぐるトラブルが世界共通に多くなってきた。
○音は極めて心理的なもの。「騒音」ではなく「煩音(はんおん)」ととらえる。煩音とは煩わしい音ということであり、騒音は数値で測れるが、煩わしい音は人との関係でそう感じるものだから人によって基準が異なる。
○迷惑がかかっていることでも、あらかじめ「いつ始まり、いつ終わる」のかをはっきり示して説明していると、住民の不安も少なくなる。
○学校関係のトラブルでは子どもも当事者と考える。トラブル対応をすべて先生が行うのではなく、子どもが一緒に地域住民と解決に向けて向き合ったりすることが大切である。話し合いに参加したり、住宅を回ってあいさつや説明することなど、それこそアクティブラーニングではないか。
○もっとも立派な人は、トラブルをうまく解決できる人。トラブルに発展させない、起きたとしても小さくしていける人が立派。
○学校関係者は、「学校は迷惑施設」と認識すべき。学校は公共施設だからえらい存在なのだという認識ではダメ。学校も迷惑をかけているのだという意識をもって住民の方々の中で困っている人と対応していくと折り合いはついていくのでは。
○子どもの声はカーテンを閉めさせることもあるし、カーテンを開けさせる力もある。
○都会で保育園建設をするとき、住民が反対運動をして問題になったことがあった。こういうときも問題解決には話合いが重要である。今回は、その保育園完成後に園長になる人や保育士として働く予定のある人からも話し合いに参加してもらったら住民の方々も徐々に好感をもっていった。また、当局が何回も話し合いの機会をもち、言われたことにしっかり対応していくうちに住民の方々は徐々に当局に好感をもっていった。当局が立てた計画を住民の声によって柔軟に変更していくことを通して、住民側も感情論だけを通しても聞き入れてもらえないことも分かっていき、完成に至り、それまで反対していた人が支える側になっていった。
2時間の講演でしたが、飽きさせることのないテンポいい語り、興味深い内容で、あっという間に終わってしまった感じの講演でした。クレームというとできれば関わりたくないという思いがあるでしょうが、話をしてくださる方もそれなりに勇気をもって連絡をしてきたのですから、しっかりと受け止め、ピンチではなくチャンスであるという意識で対応していきたいと思いました。小野田先生、ありがとうございました。