原発特別委員会研修会
今日は原発特別委員会第1部会主催による研修会が行われました。講師は京都大学原子炉実験所教授で新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会委員の中島健先生、テーマは「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会の動向について」でした。以下印象に残っている言葉です。
○新潟県原子力発電所の安全に関する技術委員会(以下、技術委員会)は2003年2月5日に発足した。2002年に発覚した東京電力に「原発トラブル隠し」を受け、原発の安全管理について専門家が県に助言・指導するため翌年に設置された。2008年に中越沖地震への対応をするために拡充、目的の追加があった。
○2007年7月16日の中越沖地震後の柏崎刈羽原発の稼働は、「2009年12月28日に7号機が運転再開(→2011年8月に運転停止)」「2010年1月19日に6号機が運転再開(→2012年3月に運転停止)」「2010年8月4日に1号機が運転再開(→2011年8月に運転停止)」「2011年2月18日に5号機が運転再開(→2012年1月に運転停止)」。2011年3月11日に東日本大震災発生。
○福島第一原発は地震だけでは重要なところは損傷がなかったと言われているが、まだ検証中であり、実際は本当のことは分からない。
○福島第一原発は「止める」ことはできたが、「冷やす」「閉じ込める」ができなかった。また、事故後のしばらくは情報発信も1か所でなされなかった。
○1999年9月30日にJCOウラン加工工場事故が起き、住民150人くらいが避難した(日本で初めて原子力災害で住民が避難した)が、その当時はまだ防災については内閣も含めて意識が高くなかった。
○JCO事故の教訓は生かされたこともあったが、東日本大震災ではオフサイトセンターが使えなかったり、SPEEDIも使えなかったし、原子力防災ロボットも使えなかった。
○SPEEDIは風向きやいつ放射線が漏れたか、雨の様子などから考えても避難等の判断には使用できない。原子力規制庁はSPEEDIは使わないことに決めた。
○原発ロボットを開発することも大切だが、それを操作する人、オペレータを育成する必要がある。
○東日本大震災を受け、原発安全方針の見直しが必要になった。原子力安全委員会も所属省庁を変えるような体制の変更があった。原子力安全委員会は2012年9月19日に環境省内に原子力規制委員会として発足し、「独立性の確保」「原子力規制組織の一元化」「危機管理体制の強化」がなされた。原子力安全方針では従来の安全基準をそれぞれ強化するとともに、シビアアクシデント対策を新設した。
○シビアアクシデント対策とは、「放射性物質の拡散抑制」「意図的な航空機衝突への対応」「格納容器破損防止対策」などのこと。
○新規制基準適合審査に柏崎刈羽原発は2013年9月27日に申請を出した。申請を出した全国19の原発のうち現在は5つの原発が審査を終了している。
○新潟県技術委員会として、福島第一原発事故の検証は事故調査が目的ではなく、事故の検証から教訓を引き出し、過酷事故を防ぐために必要な課題を提起することである。2012年に検証項目の整理・課題の抽出をし、2013年からは6つの課題を課題別にディスカッションをした。
○6つの課題とは「1.地震動による重要危機の影響」「2.海水注入等の重大事項の意思決定」「3.東京電力の事故対応マネジメント」「4.メルトダウン等の情報発信の在り方」「5.高線量下の作業」「6.シビアアクシデント対策」である。現在この1は継続中、2~4は合同検証委員会にで議論中、5~6は概ね収束した。
○今後の新潟県技術委員会の方向性は、「福島第一原発事故の検証」「フィルタベント設備の検討」「柏崎刈羽原発の状況(トラブル報告など)」。
○新潟県技術委員会は原発の再稼働の可否を判断する役割は明示されていない。原発事故の教訓を引き出し、それを柏崎刈羽にどう反映できるのかを考えることである。また、中越沖地震の検証も含めて行う必要があると考えている。さらに、避難に関しては検討する事項に入っていないが、それを含めて検討していこうとしている。
○「避難訓練」等の訓練で一番重要なことは、「意思決定者による意思決定の訓練」である。原発事故だと意思決定者は総理大臣である。
新潟県技術委員会が実際に取り組んでいることが分かりやすく説明されました。原発の再稼働に賛成、反対、慎重などに関係なく、ただ事実として取り組んでいることの話でしたし、その委員である中島先生のお人柄なのか、内容も引っかかるところもなく、ストンと落ちていきました。桜井市長も一緒に聞いていました。技術委員会のことだけでなくそれ以外の上記に記したことも改めてしっかりと考えることができて、大変有意義でした。中島先生、ありがとうございました。