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本当に学校でのフッ化物洗口は必要か

2月定例会議でも一般質問しました「学校での一斉フッ化物洗口」は本当に必要なことなのでしょうか。従来「フッ素」と呼ばれていたものが今は正しい呼び方として「フッ化物」になりました。

全国においても、県においても子どもの虫歯を少なくしていく方法として「フッ化物応用を推進していく」としています。このフッ化物応用には「フッ化物塗布(とふ:歯に直接塗ることです)」「フッ化物洗口」「フッ化物配合歯磨剤」「フロリデーション(飲料水道水の中にフッ化物を調整すること)」があります。具体的目標として、国としては8020(ハチマル・ニイマル)の実現に向けて取り組んでいます。つまり80歳になっても自分の歯を20本以上保っていこう、としているのです。その中で、フッ化物による洗口や塗布による虫歯の抑制は確かに効果があると認められています。それも永久歯に生え変わりの時期である14歳までの期間にフッ化物の洗口や塗布は効果的だとしています。

新潟県が発行している「フッ化物洗口マニュアル」の中に学校等で行う集団フッ化物洗口のメリットとして3つのことが挙げられています。

①「継続性が保たれます」・・・家庭では11年にもわたり毎日実施することは困難であり、集団生活の中に位置づけ実施することにより確実に継続することができます。

②「実施している施設内のすべての子どもたちに効果が表れます」・・・多数の子どもを対象に容易にでき、その施設内すべての子どもたちが実効ある虫歯予防を受けることができます。障害のある子どもなど虫歯のリスクの高い子どももフッ化物の恩恵を受けることができ、健康格差に縮小につなげることができます。

③「学校・園における保健活動全般の活性化を促します」・・・自分の歯と口の健康全般に対する関心と理解を深めることができます。

このようなことからしても、子どもの口腔歯科健康においてはフッ化物応用はやって当たり前のことではないかと思われる人が少なくないと思います。新潟県ではフッ化物応用の中のフッ化物洗口を54.0%の小中学校で実施しています。そのためか新潟県は12歳児の虫歯の保有数が全国1少ない県になっています。しかも全国1位を15年も続けているのです。素晴らしいことです。また、学校でのフッ化物洗口は週に1回、うがいに使う時間は5分程度です。

以上ここまでのお話ではフッ化物応用の中のフッ化物洗口を進めるのは自然な流れだと思われます。しかし、良いこと、素晴らしい実績しか聞かされていないことに気が付きませんか? フッ化物についてのデメリットを聞いたことはありますか? そうなのです、当然のことだと思いますが、推進していく立場としてはそのデメリットについてはできるだけ知らせない、デメリットとしてもそれは解決できること、として伝えていますから、印象には残っていないと思います。確かに重大な事故としての報道はほとんどありませんし、フッ化物の溶液を飲み込んだとしても急性中毒になることはほとんどないかもしれません。

私が教育現場で経験したことをもとに、あえて疑問に思っていることを以下に記します。思いついたまま書きますので、読みずらいかもしれませんがお許しください。なお、私の30年間の教員生活の中で生徒にフッ化物洗口を施している学校での勤務はありませんでした。

○フッ化物洗口についてのデメリットを聞いたことがありません。→学校現場は上意下達ですからやると決まったことに対してはデメリットの説明はあまりしません。デメリットを聞いたところで実施することは覆りません。保護者は学校がやるとなったらいいことに決まっているという思いがあるから、デメリットについての追及はあまりしないようです。

○柏崎市では30年ほど前にフッ化物洗口を学校で集団実施しようとする動きがありましたが、議会等で議論になり実施しないことになりました。10年ほど前に議会本会議の一般質問でこの話題が取り上げられた時、当時の教育長は「実施しない」という答弁をしています。→なぜ今になって急に実施しようとする動きが活発になったのでしょうか。市民が忘れたころを見計らってのタイミングなのでしょうか。何か大きな力が働いたのでしょうか。

○口腔歯科衛生の観点において重要なことは1番目に「食生活の改善」、2番目に「ブラッシング」、3番目に「その他」の優先順位があるとフッ化物洗口を推進する立場の歯科医師も言っています。「その他」にフッ化物応用は入るとのことです。→さらに食育とブラッシングを強化していくことが、中学卒業後の口腔歯科衛生についても有効ではないでしょうか。フッ化物洗口をしているからブラッシングはしなくてもいいと考えている子どももいるようです。

○フッ化物洗口での虫歯の予防効果は40~60%です。→フッ化物洗口は100%有効ではないとも言えます。やはりブラッシングの励行だと思います。

○学校で使用するフッ化物は「劇薬」の粉末です。保健室でカギをかけて保管しています。それを洗口の前に養護教諭などが洗口に適する濃度まで薄めて子どもたちが使う量を用意します。後片付けも養護教諭が行います。→準備から片付けの間は保健室の機能は停止します。1週間に1回5分の洗口とはいえ、その準備から片付けの時間は相当かかります。

○カギをかけて保管してあるといっても保健室は子どもにとってそれなりに自由に出入りできるところです。100%いたずらできないとは限りません。→持ち出して飲み込んだり、給食に混ぜたりするいたずらがないとは言えません。目に入ったらどうなるのでしょう。

○劇薬を使うことは理科の実験にもあるかもしれません。プールの塩素も単独では危険なものです。しかしそれらは担当の教師がついて行うもので、それらを体内に入れることはありません。→洗口は吐き出すとはいっても、体内に入れるのです。

○教職員の本来の業務でないことを行うことによる多忙感により、きめ細かに見取らなければならない、対応しなければならない子どもたちに対してそれが困難になることが考えられます。→他の地区でやっているのだからできないはずはない、という言い分は本来の趣旨に対しての正しい回答にはなりません。他の地域で洗口をやっているのであれば、それをなくせばもっときめ細かに子どもたちに対応できるのではないでしょうか。

○何かあったときの責任はどこにあるのでしょうか。→当然学校や担当者に最終的な責任を負わせることはないと思いますが、責任問題になる可能性があること、本来の業務ではないリスクの高いことについてはやるべきではないと思うのですが。

○フッ化物洗口が原因で斑状歯になった子どもが現実にいます。斑状歯とは白い斑点ができている歯のことです。→鹿児島県教職員組合「教育かごしま」2015年6月1日号。

○平成26年度の調査で、12歳児の虫歯の保有数は新潟県が全国1位で0.48本、全国平均は1.00本、柏崎市は0.66本です。→柏崎市は新潟県内では確かに20市中一番多い保有数なのですが、全国平均よりも圧倒的に少ない数値だと思うのです。これは柏崎市がブラッシングを徹底的に指導してきた賜物です。数値だけ見ると、これ以上減らすこととそれへのリスクとを考えるとどちらを優先的に考えた方がいいのかわかると思うのですが。なお、全国的に虫歯の本数は年々減ってきています。

○日本弁護士連合会が意見書として平成20年の数値を使ってフッ化物洗口の中止を求めているものがあります。フッ化物洗口を32.9%実施していた新潟県の虫歯は0.8本、実施率0.6%の広島県は1.1本。実施率1.0%の埼玉県は1.3本。実施率0.0%の東京都は1.4本でした。このことから「フッ化物洗口と虫歯の本数には相関性はない」と結論付けています。→これを受けて秋田弁護士会もフッ化物洗口・塗布の中止を求める意見書を提出しました。

○現在では虫歯により歯周病の方が口腔健康においては問題になっています。しかし、フッ化物応用は歯周病には全く効果はないのです。→中には虫歯に効くから歯周病にも効くはずだと勘違いをしている人もいます。

○フッ化物洗口の学校での集団実施を推進している歯科医師の中で、学校現場での大変さを考えていなかったと話してくださった方もいました。→往々にして推進する側はそれが正しいと考えるなら、どんなことでも周りの協力は得られると考えていたようです。現場の意見を聞けてその視点が欠けていたことに気付いたをと打ち明けてくださいました。

○子どものためなのだからやるのは当たり前で、それを拒んでいるのは教職員が怠けたいからではないか、と考える人がいるらしい。→朝食を食べてこない子どもがいるから学校で朝食を出しましょう、とはならないと思います。まずは家庭で子どもの健康を考え、取り組みましょう、となるからです。子どもにとっていいことを、子どものことを考えずに自分が楽しようとしてやらないような教職員はいません。子どもにとって本当にいいことなのかを考えたうえで、やるのかやらない方がいいのかを判断しているのです。フッ化物洗口は学校での一斉実施がいいことなのかは実はまだ明白になっていないことなのです。

○どんな子どもにも一律にフッ化物洗口を推奨する必要があるのでしょうか。→子ども一人一人の個人差が大きい時期です。虫歯が心配で歯周病も心配な子ども、虫歯はなくて歯周病が心配な子、特に虫歯も歯周病も問題のない子、など様々なのに、一律にリスクがあることを保護者から離れた場面で行うことは本当に必要なことなのでしょうか。保護者の同意を得てからやるとは言いますが、学校が推奨することに対しては、虫歯がない子どもでも保護者は同意してしまいやすいと思います。

○インフルエンザの予防接種は以前学校で行っていたものが各家庭が医師に出向いて行うようになりました。フッ化物洗口や塗布も家庭が歯科医に出向いて行うようにできるはずです。→補助金を出したり、家庭の啓発活動をもっと行うようにしたらいいのではないでしょうか。

○フッ化物により歯の健康がより保たれることが分かったのは、原爆開発のために純度の高いウラン235を生成する過程でフッ素が必要になったことがきっかけだそうです。

これは私が感じたところであって、実際にフッ化物洗口を実施している学校の先生方は別のことを感じているかもしれません。ここにはフッ化物洗口についての疑問を記しましたが、私の立場としては、まったくの反対ということではありません。効果は認めます。しかし、実施するのであれば家庭の責任で、家庭で行うようにしたらどうかと思うのです。それは置いておいて、フッ化物洗口を進めるのであれば、学校の保護者のみならず市民の皆様にメリットとデメリットをしっかりと伝えたうえで、判断してもらうようにしてほしいと思います。

・・・以上長々と述べましたが、私が定例会議で一般質問しても、文教厚生常任委員会で質疑してもピンときていない議員もいたかもしれません。傍聴やネット中継をご覧になった方々も同様だったかもしれません。中には子どものためを思って提案している当局の足を引っ張っているのではないか、と思われた人もいるかもしれません。とんでもないことです。そんな誤解がないように、是非、フッ化物洗口をしっかりと考えていくためにも、一緒に勉強したいと思います。興味関心のある方はご一報をお願いします。

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